「オーデュボンの祈り」 伊坂幸太郎
ずっと読みそびれていた伊坂さんのデビュー作。
不思議な話だった。
外界と遮断されてる島を舞台に、未来が見えるという案山子や、殺人を容認されている男などが登場する
シュールな話だった。
伊坂作品らしく、細部に伏線が張り巡らされていて、ラストはそれらが上手く繋がり清々しい気持ちになった。
個々に独立した話が展開していると思いきや、実は周到に全てが繋がっている。
伊坂さんの得意とする手法に今回も楽しませてもらった。
時間軸がバラバラに書かれているので、登場人物が少しずつ接触して、互いに影響しあってることに
最後まで気付かず。
後味の悪い救いようのない話だと思ったが、ラストで救われた。
「譲ってはいけないもの、そういうものってあるでしょう?」この言葉が印象に残った。
「夜を着る」 井上荒野
8編からなる短編集。
真面目な女子高生のしぐれが、初めて学校をズル休みした日の出来事が書かれている「映画的な子供」が
面白かった。特に何か起きる訳でもなく、淡々と時間が過ぎていく・・・
その持て余した感じがいいなぁと思った。
「リアル・シンデレラ」 姫野カオルコ
何というか・・・・実に切ない話だった。
空のコップをいかに満たされていると感じられるか・・・そんな風に読んでしまった。
主人公の泉について彼女の周囲の人の話を構築して語られていく形式なのだが、
それが最後のほうは歯がゆかった。
もっと泉自身が、どう思っていたのかが知りたかった。
泉は幸せだったのだろうか?
4人の女性作家が、実際にヨーロッパの田舎町を旅して書き上げた食と愛の短編集。
ひとつめは、角田光代作「神様の庭」
60ページにも満たない短編だけど、食べることは生きることというメッセージが凝縮されていて
何度も涙腺がゆるんだ。
主人公は、かつて悲しいときも皆で集まり食事を共にする親族達の習わしを不謹慎と嫌っていた。
でも、一緒に食卓を囲むということには、ただ食べるというだけでなく、様々な感情をその場の皆で
分かち合うという意味があると知る。
美味しいという幸せな感情を大切な人と共有するのは、生きていることそのものなんだなと感じた。
下巻は、主人公の渡辺早季が少女から大人に成長し、バケネズミの反乱や悪鬼の出現に対抗していく物語。
悪鬼・・・遺伝的欠陥により大量殺人を犯す病気。正式名はラーマン・クロギウス症候群。
業魔・・・こちらも遺伝的欠陥によるもので、呪力が勝手に体外に漏出し周囲にあるもの全てを汚染する病気。
正式名は橋本・アッペルバウム症候群。
↑この設定読んだとき、わくわくしました~。SF苦手な私もこの物語には引き込まれました。