「ブランケット・キャッツ」 重松清
馴染んだ毛布と共に二泊三日でレンタルされるブランケット・キャットと借主の心の交流を描いた
7編からなる連作短編集。
猫を借りに来る側にもそれぞれ悩みがあり、短い間だけど猫と暮らすことにより彼ら自身が、
自分の内面に向き合っていく。
どの話も押し付けがましかったり大げさだったりせず、自然と涙腺がゆるんだ。
全部好きになったけど、中でも「旅に出たブランケット・キャット」が大好き。
勇敢で賢いアメリカン・ショートヘアのタビーの物語。
「木暮荘物語」 三浦しをん
木造二階建てのアパート木暮荘を舞台に、木暮荘の住人や住人に関わる人達にまつわる物語。
1話めの「シンプリーヘブン」が面白かった。
勝手に海外に撮影旅行に旅立ち、3年間も音信不通だった元カレが急に現れ、今カレも含めて
奇妙な同棲生活を送る話。
「ばんば憑き」 宮部みゆき
6編からなる妖しの話。宮部さんの時代物は裏切らないなぁ。
これも全部よかったです。
表題作の「ばんば憑き」は、夜更けに屏風越しに語られるというシチュエーションだけで、
話に引き込まれました。
他にも、悲しい最期を遂げた少女の影が、楽しく遊ぶ子供達に混ざろうと、一緒に月夜の影踏みをする
「お文の影」も切なくて印象に残りました。
「鬼」 今邑彩
8編からなる短編集。
あとがきで作者が書いてたけど、初めの3編はミステリー特集に掲載され、後の5編はホラー特集に
掲載されたものを単行本としてまとめたそう。
私は、断然後の5編が面白かったです。
「食堂かたつむり」 小川糸
恋人に家財道具も金も全て持ち逃げされた主人公の倫子が、唯一手元に残った祖母の形見の糠床を
持って故郷に帰り食堂を開く話。
倫子と母ルリ子の確執がほどけていくまでの話でもあったが、そこに至るまでに食堂かたつむりを訪れる客を
倫子が愛情を込めた料理でもてなす段階が楽しかった。
出てくる料理がどれも本当に美味しそう!
「東京日記2 ほかに踊りを知らない。」 川上弘美
タイトルどおり、川上さんの日記である。
川上さんは、特に毎日どこかに出かけたりしなくても、日常の中でめまぐるしく感情が揺れる人だと思った。
自分で出した粗大ゴミが回収されたら、なんとなくもう会えない悲しみに襲われたり・・・
台所のぬるぬるを擬人化(!)して、趣味やコレクションまで想像してるのがおかしかった。
「ペンギンの台所」 小川糸
小川糸さんのエッセイ。元は、「糸通信」というブログだそう。
小川さんの何事にも感謝する姿勢が素敵だった。
そして、たまにお料理も作ってくれるペンギンさんが居て羨ましい。
70歳に達した老人を山へ捨てに行く姥捨山の風習を続けている村。
しかし、山に捨てられた老人達は「デンデラ」という集合体を作り生きていた・・・
更に、この老婆たちが、凶暴な羆(赤背)と死闘を繰り広げるという・・・
すごく期待して読み始めたのに、途中から面白さが失速してしまい残念だった。
デンデラでの老婆達の生活か、羆との闘いかどちらかに比重を置いて、メリハリがあれば
もっとよかったのになぁと思った。
「ひとり膳 料理人季蔵捕物控」 和田はつ子
季蔵シリーズ第11弾。
長年に亘る因縁の話だったけど、最期まで救いがなく悲しい結末だった。
塩梅屋の見習いの三吉が健気で可愛くて、物語を少し明るくしてくれていた。
「夕暮れをすぎて」 スティーヴン・キング
7編からなる短編集。
どの作品も映像がすぐに浮かぶ映画的な印象だった。
特に気に入ったのは、まず1話目の「ウィラ」これは、恋人同士の永遠に続くファンタジー。
2話の「ジンジャーブレッド・ガール」これ、途中からの疾走感がすごかった!!
そして、雨あがりのビーチでのヒロインと殺人鬼の対決シーンは、潮の香りまで感じるほどリアル。
5話の「エアロバイク」これは、なんて不思議なんだろ。
ただ、ダイエットのために自宅でエアロバイクを漕いでいるだけのはずなのに・・・
想像が妄想に発展して更に現実に。
「夜に目醒めよ」 梁石日
こんなエンターテイメント性の高い小説も書くんだと意外でした。
カバのように太り、普段はのっそりとしか行動しないのに、キレると手のつけようがない程凶暴になるテツ。
ストイックで容姿端麗だけど、こちらもキレると手がつけられないガク。
主人公の二人も魅力的だし、脇役の美貌のニューハーフのタマゴも魅力的。
これ、シリーズ物かな?