「学問」 山田詠美
四人の少年少女がそれぞれ大人になっていく過程を描いています。
舞台が、静岡なので静岡弁が話し言葉として使われてるのですが、それがとてもキュートでした。
主人公のフトミが欲望に忠実で決して欲望を抱くことを後ろめたく思ったりしないところが潔くて好きです。
詠美さん特有の言い回しにうっとりさせられました。
中でも幼い頃のテンちゃんがフトミに言った「おまえなんか捕虜だ」・・・・なんて甘い言い回し!
「シャトゥーン ヒグマの森」 増田俊成
冬の北海道の森林を舞台に、閉ざされた環境でヒグマの脅威と人間が闘う物語。
まず・・・ヒグマこえーー!!!
もうこの本はそれに尽きます。
シャトゥーンとは、穴持たずの意味で秋に食い溜めを失敗し冬眠し損ね餌を求めて徘徊する熊のこと。
この状態の熊は非常に凶暴になっていて危険な存在だそうです。
ヒグマについてかなり詳しい記述があって興味深かったです。
体重は、最大450キロまでになり、その巨体のわりに敏捷でかつ身体能力のみでなく頭脳も優れているとか。
主人公の薫は、娘を守るためにヒグマと闘います。
一方のヒグマのギンコも子連れで、子供を飢えさせない為に殺戮を繰り返します。
パニック小説らしいスピード感溢れる描写を楽しみました。
生きながらにして肉体をヒグマに食われる恐怖と痛みが鮮明に書かれていて震え上がりました。
「ロード&ゴー」 日明恩
ロード&ゴーとは、救急における非常事態宣言のこと。
生命に関わる損傷の観察と処置のみ行い、他は省略し5分以内に現場を出発し患者を搬送すること。
鎮火報シリーズにも登場してた機関員(運転士)の生田が主役の物語。
膨大な専門知識を説明臭くなくわかりやすく書いてるところにいつも感心します。
ストーリーは途中で察しがついたけど最後まで飽きずに読めました。
職業に対する誇り、仲間を信じ尊重する連帯感が熱く書かれていて読後感は清々しかったです。
雄大が少しだけ登場するのも嬉しかったです。