表題作の「ぬるい眠り」を含む九編からなる短編集です。
どの短編も江國さんらしい表現が、いっぱいで一文たりとも読み飛ばせません。
中でも、「とろとろ」という話が私は好きになりました。
「とろとろ」・・・恋人のことを愛しすぎる女の人が主人公の話で、彼女は恋人と居ると何もかもが
まるで夏の日のカスタード←(この表現素敵です。)のように甘くとろける日々を送っています。
恋人と居ると幸せなんだけど、自分が自分でなくなるような不安を感じ、結果、恋人以外のたくさんの
異性と関係を持ってしまいます。
自己の証明の為に・・・そして自分が異性と一対一で向き合えるという確認の為にも・・・・
恋人のことが好きすぎて他の異性と付き合うなんて、本末転倒な気もしますが、読んでいると
ひどく真っ当なことのように思えてくるのが不思議でした。