まぶりなの怠惰な日常

せっちゃん、30周年おめでとう💕

「ソウルズ」 田口ランディ

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 本屋で表紙の色合いが気に入ってジャケ買いしたのですが、当たりでした。
 田口ランディは、数冊読んだことがあるぐらいですが、割と好きな作家です。

 この本は、あとがきで著者が言ってるように、目に見えない存在が登場したり、ありそうでなさそうな
 出来事が起こったりする短編集です。

 かと言っても、オカルトチックな話ばかりでもないのですが。

 とにかく、10編全てがバラエティーに富んでました。

 例えば、高校生の時に死んでしまった女の子が、現在も当時の彼氏の部屋に霊として住みついている
 切ない話や、いじめが原因で学校の体育倉庫で、今まさに自殺しようとしてる少女の話や、民族音楽
 デュオのふたりが、クリスマスに病院で思わぬ観客の前で、コンサートを行う話・・・

 一編一編に大なり小なり感動する箇所があって、夢中になって読みました。

 私が、特に気に入ったのは、「西風の日」という話です。

 主人公の女性は、若い頃には男性に混ざって過酷なヨットレースに出場していた経験を持つのに、
 現在は、ヨットの世界から足を洗い、男性ウケする愛される女性を演じています。

 そんな彼女が、現在の彼氏(青年実業家)が所有するヨットで、久しぶりにクルージングに出ることに
 なり、そこにヨットを動かすクルーとして雇われたのが、昔、彼女のヨットのパートナーでもあった
 元彼。

 でも、か弱い女性を演じている彼女は、ヨットに関する知識があることを今の彼に隠しています。

 そんな訳ありのクルージング中に、ふいに強風にヨットが煽られ・・・


 この元彼のヨットマンが彼女に昔、言った言葉・・・・

 「オマエは女だけど根性がありそうだ。信頼できる。初めて会ったとき そう思った」

 お互いの命を預け合うヨットのパートナーであり、恋人でもある男性にこんなことを言ってもらえる
 なんて、女性として至福の喜びだと思いました。

 ラストの一行は、彼女の心まで表してるようで、たまらなく爽快。